交付が翌年になる住宅金融公庫の貸付けについて
住宅金融公庫を利用してローンを組む人も多いかと思われますが、この住宅金融公庫の融資の融資というのは、事務の都合で資金の交付日が入居した年の翌年になってしまうことがあります。
例えば、12月上旬以後に契約されたものは、翌年の1月に資金の交付が行われるというように。
というわけで、年内にせっかく入居して金銭消費貸借契約を締結しても、契約を締結した年の12月31日現在では借入金残高がないので、初年分の住宅ローン控除は受けられなくなるのではないかという疑問が発生します。
これについては、金銭消費貸借契約が要物契約ということを前提にして、契約締結の年に住宅ローン控除は認めるべきではないとする考え方もあるのですが、次の理由によって、契約締結の年についても住宅ローン控除が認められることになっています。
住宅金融公庫の融資の実行が翌年でも住宅ローン控除が認められる理由
以下、次の4つの理由からです。
■住宅取得資金についての借入金の年末残高等証明書の「住宅借入金等の金額」欄の「当初金額」欄には、住宅借入金等のその借入れ等をした金額とその住宅借入金等についての契約締結の年月日を記載することになっていて、融資の実行日の記載は求めていない。
これは、租税特別措置法第41条の対象になる借入金については、むしろ、諾成契約としての金銭消費貸借を前提にしているものと考えられること。
■消費貸借について民法第587条は、「消費貸借ハ当事者ノ一方カ種類、品等及ヒ数量ノ同シキ物ヲ以テ変換ヲ為スコトヲ約シテ相手方ヨリ金銭其ノ物ヲ受取ルニ因リテ其効力ヲ生ス」と定めているので、消費貸借契約の成立については要物性を必要とするとしているから。
ただし、この見解については、利息付消費貸借について諾成契約たる消費貸借を認めるべきであるとするものもあり、住宅ローン控除の適用については、必ずしも貸付資金の交付を絶対的要件としなければならないというものではないということ。
■年内に入居(注)したが、たまたま契約を締結した日と資金の交付の日が年をまたがったために9年分しか住宅ローン控除が受けられないというのでは、納税者の理解が得られないこと。 (注)住宅ローン控除は入居した年以後10年間(平成11年1月1日〜平成13年6月30日の間に居住用にしたときは15年間)受けられることになっています。
■住宅金融公庫の金銭消費貸借契約の第1条には「・・・住宅の取得資金として次の条件により金銭を借り入れ、これを受領しました」となっていて、当事者間ではすでに資金の交付を受けたものとしているため、住宅ローン控除の適用については、仮に現実の資金交付が済んでいなかったとしても、契約締結の年の12月31日現在において借入金残高があるものとしても問題ないと考えられること。 |